今回ご紹介する「でっこりぼっこり」はナンセンスを通り越した「高畠ワールド」。日々の疲れがぶっ飛ぶようなくだらなさ、可笑しさをこの絵本は提供してくれます。
ミミです
出典:でっこりぼっこり(高畠那生 作・絵)/絵本館
「でっこりぼっこり」
あらすじ
ある巨大人がマラソン中につけていった大きな足跡。
ぼっこりとへこんだ大きな穴。そこはプールになったり、養鶏場になったり、公共トイレになったり…
その巨大人の足跡は、地球の裏側にも影響が及んでいました。
ぼっこりへこんだ反対側の地域には、でっぱりの足跡が出来てしまっていたのです。まさに凹凸の関係。
やがて地球半分を回ってきた巨大人。今度は自分のつけたでっぱりの足跡を踏みつけながら走って行ったので、凹凸がなくなり無事地球は元どおり。
しかし最後、巨大人が…
徹頭徹尾役にたたない絵本、ここにあり。なにがでっこりで、どこがぼっこりなのか、それは見てからのお楽しみ。
「でっこりぼっこり」
みどころ
「絵本っておもしろい」と感じる一冊
この絵本を読んで感想を書きましょうと言われたら「おもしろかった」。これに限ります。
大人も子供もつっこみたくなるストーリー展開、最後はまさかのオチ。
最後のページで「え、これで終わり?…まあいいか。おもしろかったし」という妙な納得感。
高畠さんの絵本はストーリーとイラストの持つ「温度」が同じなんですよね。だから荒唐無稽な話でもすんなり受け入れちゃう、そんな感じです。
絵本っておもしろいなあ、ストレートにそう感じる一冊です。
ちなみに。私は出版社からの紹介文「徹頭徹尾役にたたない絵本」という件ににまず笑いました。
ちょいちょい出てくる個性的なキャラクターたち
巨大人より気になった、ナレーター役のメガネをかけた黒豹、何者でしょうか。
最初の登場のポーズからしてツボだったのですが(左手で後ろを指さし、右手は左肩を持つという気取りぶり)、最後はなんの説明もなくフェードアウトしております。。
あのキャラクターも登場していますよ。「チーター大セール」のチーター、今回もひっそりと露店業を営んでおりました。
「チーター大セール」関連記事はこちら
絵本「チーター大セール」オシャレでシュールでナンセンス…クセになりますそしてこの巨大人…、本当に巨大なんですね。高畠さんの画力が発揮されています。
出典:でっこりぼっこり(高畠那生 作・絵)/絵本館
すね毛どころか指毛まで…素晴らしい画力に感動です。
余談ですが…
漫画「進撃の巨人」をご存知の方は多いかと思いますが、その巨人たちと何となくかぶります。…そりゃ巨人ですからね。
調べてみると、驚いたことに「でっこりぼっこり」と「進撃の巨人」のデビューはまさかの同じ2009年。
「でっこりぼっこり」は9月に初版、「進撃の巨人」は『別冊少年マガジン』(講談社)の10月号から連載スタートということで、ほぼ同じ時期、世に巨人たちが出回っていたのですね。なんの因果でしょう。。
あ、でも「でっこりぼっこり」の巨大人は人を食べたりしないのでご安心を。マラソンをしているだけです。笑
絵本から学ぶ「笑い」
絵本から学べるものはたくさんあります。優しさ、悲しさ、勇気、いたわりの心など。
この「でっこりぼっこり」の絵本で学べるものとして挙げるなら、人として大事な要素である「笑い」です。
その「笑い」は、くだらないことでも楽しければいいんじゃない、そんな大らかな気持ちにしてくれます。
子供がなんかイライラしてる、自分もイライラしてる、なんて時にぜひ読んでください。
馬鹿馬鹿しい可笑しさというのは、思ったよりも心が癒され、豊かな気持ちになるものです。
とりあえず小難しいことを考えないで、高畠さんの絵本の世界を大いに楽しんでください。
◆高畠 那生(1978年生まれ)
◆岐阜県出身
◆絵本作家
◆東京造形大学絵画科卒業。「メガネをみてよ!」第4回ピンポイント絵本コンペ入選、「むかったさきは…」第25回講談社絵本新人賞佳作、「カエルのおでかけ」第19回日本絵本賞、他に「ぼく・わたし」「でっこりぼっこり」「バナナじけん」「みて!」など
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