ミミ
出典:うどんのうーやん(岡田よしたか 作・絵)/ブロンズ新社
『うどんのうーやん』
あらすじ
忙しいうどん屋さんのため、うどんのうーやんはお客さんのところへ自分で出前に向かいます。
心の優しいうーやんは途中、困っていたり悲しんでいる食材たちを、次々とどんぶりに入れ、川をくだり、山を登り、お客さんの家へと急ぎます。
このてんこ盛りうどん、美味しく食べてもらえるかな?
人手がたりないうどん屋さん。うどんのうーやんは、自分で出前にでかけます。道を走っていると、からからのメザシやふにゃふにゃの絹ごしどうふと出会います。やさしくてふとっぱらなうーやんは、どんどん自分のどんぶりに乗っけて、川をわたり山をこえ…… さて、無事に出前を届けることはできるのでしょうか!?
『うどんのうーやん』
みどころ
人情厚く男気のあるうーやん
まず…うーやん、関西弁です。
私は中部圏の人間で、関西弁にあまり馴染みがないのできつい印象でしたが、うーやんの「おおきに〜」「ほな いってきますう」など語尾の柔らかさは、とても心地良いです。
そして、この関西弁がうーやんを一層人情厚い人物(うどん)に感じさせてくれます。
困っていたり悲しんでいためざしやうめぼし、絹ごしどうふたちを「ここ はいり。ぬくもるよ」と、どんぶりに入れて(まさに)温かく迎えるうーやん。
優しさだけではなく、大きな川を前にして「わたるしかないやろ」、高い山を前にして「のぼるしかないやろ」…と男気のあるうーやん、かっこいいです。。
出典:うどんのうーやん(岡田よしたか 作・絵)/ブロンズ新社
常識にとらわれてはいけない
うどん屋のお店が忙しいから、自分で配達先まで出向く…つまり自分が食べられるために行くということ?
…そんな常識的なことを考えていると、このお話を楽しめません!
ひとでぶそくのため うどんのうーやん
じぶんで いかなあかんのです。
そう、いかなあかんのです。
うーやんだけでなく、カツ丼やお寿司たちも、自ら出前に向かっています。
そして、途中で出会ったそうめん、めざしや絹ごしどうふ、たこやきやエビフライやコロッケがごちゃまぜに入ったどんぶり…しかもその食材たち、普通に地面を歩いたり寝そべっていましたが、そのままどんぶりにイン。もちろん、水で土を洗い流したりしてません。
リアル感のある絵でいろいろと不安な想像が膨らんでしまいますが、細かいことを気にしてはいけません。
ただただ、楽しんでください。
読み終わって…ほら元気になった
破天荒な『うどんのうーやん』のお話。
私がおすすめする一番の理由は、突拍子もないストーリーがおもしろいから、だけではありません。
うーやんのがむしゃらな姿がとても気持ちがいい!からです。
ひとつのことに何の疑問も持たずに一生懸命やり切るということは、見ていてこんなにも清々しい気持ちになるんだなと。
そしてそれが、例え自分が食べられるためであろうと、お客さんの家までがむしゃらに向かうリアルな絵のうどんたちの姿、やはり笑わずにはいられない。
この清々しい笑い、そこがすごく絶妙!な絵本です。
あなたがもし、悲しいことややり切れないことがあったのなら、今すぐ『うどんのうーやん』を読んでみてください。
この馬鹿らしいくらいおおらかで一生懸命なうーやんに、きっとあなたも元気がもらえます。
最後に…
息子に指摘されたのですが、うーやんはうどんじゃなくてどんぶりだったの?とのこと。
う…確かに、、ラストを少し考えてみると、どんぶりがうーやんという説も有りかも。。
これは作者の岡田よしたか先生に聞いてみないと真相は分かりません…
◆岡田 よしたか(1956年生まれ)
◆大阪府出身・奈良県在住
◆絵本作家
◆『おーい ペンギンさーん』『特急おべんとう号』(福音館書店)、『ちくわのわーさん』『こんぶのぶーさん』『うどんのうーやん』『とてもおおきなサンマのひらき』『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』(ブロンズ新社)、『ハブラシくん』(ひかりのくに)、『 くしカツさんちはまんいんです』(PHP研究所)など