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オスカー・ワイルド『幸福な王子』子供は絵本、大人は童話(原作)がおすすめです

ミミです

オスカー・ワイルドの『幸福な王子』は、大人になってから読むとずいぶん印象が変わりました。管理人の考察を交えて『幸福な王子』のご紹介をいたします。

出典:幸福な王子(ワイルド童話全集)/オスカー・ワイルド 作、西村 孝次 訳/新潮文庫

大人になって読み返してみたら、印象が変わった物語というのはありませんか?

主人公こんな性格だった?ハッピーエンドじゃなかったの?こんなに深い話だったとは!…など、昔の記憶とギャップのある物語。

子供の頃には気づかなかった視点から読むと、物語の奥深さや、作者の伝えたかったことなど、いろいろな側面からの新しい発見があります。

オスカー・ワイルド『幸福な王子』は、まさにそのような物語ではないでしょうか。




『幸福な王子』あらすじ

地位も名誉も美貌も兼ね備えていた「幸福の王子」。亡くなってから宝石と金箔で飾られ豪華な像となった王子は、町の貧困を知って悲しみます。ある日、王子の像で羽を休めていたツバメに、自分の宝石や金箔を貧しい人たちに渡してほしいと頼みました。ツバメは王子の願いを叶えるため、あちこちに飛び回ります。

そのうち、宝石も金箔もすべてなくなり、ツバメは死んでしまう。そしてツバメの死を知った王子の鉛の心臓も壊れてしまいました。みすぼらしくなった王子の像を町の市長たちは、ツバメと一緒に捨ててしまいます。

神様が「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」と天使に言いました。天使は王子の鉛の心臓と死んだツバメを持っていくと、「正しいものを選んだ」と神様は王子とツバメを天国へと連れて行きました。




『幸福な王子』みどころ

ツバメの恋のエピソード

童話(原作)と絵本で違和感を感じたところは、かつて読んだ絵本には『幸福な王子』にはツバメの恋のエピソードが入っていなかったことです。(入っている絵本もあります)

ツバメは王子の像に出会う前、すらっとした腰を持つ魅力的な葦に恋をしてしまい、冬を越すためにエジプトに向かった仲間たちに遅れを取っていたのです。※葦=イネ科の植物

ですが、無口な葦に飽きてしまい、仲間たちを追ってエジプトに行く途中、王子の像に出会ったのです。

こんなエピソードから、ツバメの少し惚れっぽくて飽きやすい人間的な部分(?)が感じられますね。

王子の名言

原作訳を読むと王子、なかなかの名言を残しています。

ー私は一度もその向こうに何があるのかを気にかけたことがなかった。

ー実際、幸福だったのだ、もしも快楽が幸福だというならば。

ー生きている人は、金があれば幸福になれるといつも考えているのだ。 (結城浩 訳)

かつて、地位も名誉も美貌も与えられていた「幸福の王子」は、自分が銅像になって初めて、外の世界の貧しい人々の悲惨な様子を知り、苦しみます。

自分では何もできない銅像になってから苦しむことになった王子。なんとも切ないです。




二つに割れた鉛の心臓

王子の願いを叶えるため、ツバメは冬が来ても王子の元に留まっていました。やがて宝石や金箔は全てなくなり、寒さでツバメは死んでしまいます。

ーこんなに寒いのに、僕は今とても温かい気持ちがするんです。

ーあなたはもう何も見えなくなりました。(中略)だから、ずっとあなたと一緒にいることにします。

ー「さようなら、愛する王子様」ツバメはささやくように言いました。 「あなたの手にキスをしてもいいですか」(結城浩 訳)

ツバメが王子の像の足元に落ちたとき、王子の鉛の心臓が二つに割れました。

それまで、町の貧しい人たちを救いたい一心の王子でしたが、ツバメの死によって、ツバメの自分への愛情の深さに気づいたのではないでしょうか。

人々を救いたいという博愛の気持ちと、ツバメへの愛情。

割れた二つの心臓はこの二つの感情を表しているようにも感じます。

ハッピーエンドか否か

ツバメは自分の行いによって、貧しい人々や王子の気持ちが救われることに喜びを覚えました。死んでしまっても、そこには満足感が感じられます。

一方、王子は銅像になってから悲しみを覚えました。さらにツバメの死によってさらに深い悲しみを知ります。

私が子供の頃は、使いっ走りをさせていた王子より、死んでしまったツバメに同情していましたが、本当に救いがなかったのは王子の方ではないでしょうか。

ツバメ視点ならハッピーエンド、王子視点ではアンハッピーエンドとも取れそうですが、最後に登場した神様が物語をハッピーエンドへと導いてくれました。

善行を行えばきっとどこかで報われる、という神様の救いの手が差し伸べられたのですね。

と言っても、やはり王子、切ないです。タイトルはオスカー・ワイルド独自の皮肉ではないかとも深読みしたりして…




子供には絵本を、大人は原作を

原作(童話)は子供には少し難しいので、絵本をおすすめします。大人向けの絵本もあるのでご注意を。

好みはあるかと思いますが『幸福な王子』の絵本は、どれも絵が素敵でなので、絵をじっくり見て楽しむこともできます。

大人にはぜひ童話(原作)を読んでほしいです。大人になって読むと、自分なりの解釈や発見が何かしらあるかと思うので、そこを楽しんでいただけたらなと。

また『幸福な王子』の絵本と童話は、たくさんの出版社から出ています。『幸福な王子』『幸福の王子』『幸せな王子』…名前もいろいろあってちょっと混乱するかもですが。

出版社や翻訳者やイラストによって、いろいろなバージョンの『幸福な王子』があります。それぞれ個性や解釈の仕方があるので、その違いを比べてみてはどうでしょう?

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