今回は、ゆううつな雨の日にほんわか温かい気分になる絵本をご紹介いたします。
ミミです
出典:かさ(太田大八 作・絵)/文研出版
「かさ」はどんな絵本?
この絵本は文字のない絵本です。
色はほとんどモノクロの紙面で、女の子の持っている傘だけに赤色を使っています。
ストーリーは雨の日に女の子がお父さんの傘を持って駅まで迎えにいくという、全てにおいてシンプルですが、シンプルなところが逆にメッセージを読み手にうまく伝えている、という絵本です。
そして、読み終わったあとはとても温かい気持ちになります。雨降りの日、子供と一緒に読みたい絵本としておすすめします。
雨の中を女の子が赤いかさをさしておとうさんをむかえにいくまでに、ドラマチックで楽しいできごとに合う。墨一色の中に赤いかさを配した絵で伝える文字なし絵本。
「かさ」のみどころは?
色や文字がなくても伝わる温かさ
雨降りのモノクロの風景、それで文章もないと聞くと、なんだか少し寂しい感じがしませんか?
しかし予想を反して、この「かさ」の絵本を読み終わったあとは、とてもほんわかした温かい気持ちになります。
それは登場する人たちの表情、街並や看板に描かれている絵など、細部にわたってどこかほっとするような温かみが、この絵本には感じられるからです。
出典:かさ(太田大八 作・絵)/文研出版
ストーリーも小さな女の子がお父さんの傘を持ってお迎えにいくという、ほんわか感いっぱいです。
お父さんを迎えに行くという責任感の中、ちょっと心細く感じているところや、途中に出会うちょっとした誘惑など、女の子の気持ちが文字がなくてもちゃんと伝わってきます。
街並みの風景が素敵
この「かさ」の絵本の初版は1975年で、今から40年以上前です。
イラストには少し時代を感じますが、そのレトロなところがむしろ新鮮で味わい深いです。
特に街並みの風景は、看板などに使われている英語や洋風っぽい建物があるかと思えば、「モリヤマ薬局」や「花」と書かれた懐かしい感じのする看板や昔ながらの公園など、和洋折衷な感じがおもしろいです。
当時の時代風景がほんの少し垣間見れる感じです。
モノクロと赤い傘の持つ表現力
ポイントとして使われている傘の赤色は、少しだけオレンジっぽい朱色で、モノクロの中にとても映えています。
ページを開くとぱっと目がいくので、女の子がどこにいてもすぐに見つかります。
人形のディスプレイを眺めている時、人混みの中を一人で歩いている時の女の子の顔は、傘に隠れて見えません。
女の子はこの人形が欲しいのかな?こんなに大勢な中で一人であるいてて怖くないのかな?など、この赤い傘の下で女の子がどんな表情をしているのか想像したくなります。
他にもドーナツ屋さんに並んでいるドーナツや、すれ違う人の服の色を想像してみたり。
文字も色数も情報が少ない絵本だからこそ、自然と頭の中で考えて想像します。
このように、この絵本の持つ表現力は、子供たちの想像力をはぐくんでくれます。
「かさ」はどんな子におすすめ?
この「かさ」の絵本をおすすめするのは、ずばり女の子です。
もちろん、男の子にもおすすめしますが、食いつきが良いのは女の子だと思います。
なぜなら、赤い傘、途中にあるドーナツ屋さん、ディスプレイの中の人形など、女の子の興味のあるものがいっぱい。
そして、絵本の女の子はお父さんに傘を持って行くという「責任」を果たします。
弟、妹がいたり、幼稚園・保育園で年少組が入ってきて、これから少しお姉ちゃんになる年齢にはちょうど良い絵本だと思います。
ゆううつな雨の日、ぜひ子供と一緒に「かさ」を見て、ほんかわした温かい気持ちになれればなと思います。
余談
あるページに、かつてのNHK教育テレビ(今はEテレ)の「できるかな」ののっぽさんにそっくりな人がいます!ぜひ探してみてください。のっぽさんがモデルではないかと思いますが…よく似ています。「できるかな」を知っている人は私とほぼ同年代…古き良き時代ですな。
◆太田大八(1919年2月6日~2016年8月2日)
◆長崎県出身
◆絵本作家
◆受賞作品/『いたずらうさぎ』(福音館書店)小学館絵画賞、『かさ』(文研出版)第18回児童福祉文化賞、『やまなしもぎ』(福音館書店)1977年国際アンデルセン賞優良作品、『ながさきくんち』(童心社)第12回講談社出版文化賞、『だいちゃんとうみ』(福音館書店)第15回絵本にっぽん賞、『絵本西遊記』(童心社)第45回産経児童出版文化賞など
[…] 絵本「かさ」の紹介ページ […]