ミミ
出典:ヘリコプターたち(五味太郎 作・絵)/偕成社
「ヘリコプターたち」
あらすじ
ずっと長い間ひとりぼっちだった緑色のヘリコプターが、ピンク色のヘリコプターと巡り会いました。
その2機のヘリコプターは一緒に遊び、長い旅立に出ます。
森を越え、海を越え、町を越え、お互いを支え合いながら飛び続け、ある村の教会へとたどり着きました。
その教会で、たくさんの新しい命の誕生。
ずっと薄暗い画面だったのが一転、まばゆい光の中、小さなヘリコプターたちが、新しい風の中を羽音たかく飛び回ります。
そして…『おや あのヘリコプターたち あれから 何処へ行ったのだろう。』
生まれた場所を飛び立って以来、孤独な旅を続けていたヘリコプターがひとりのパートナーにめぐり会う。五味太郎の独創的な絵本。
「ヘリコプターたち」
みどころ
行間を読ませる絵本、ここにあり
ヘリコプターが飛んでいる
飛びつづけている
もう たいぶながいこと
ひとりぼっち
ようやく
めぐりあい
たわいなく
めぐりあわせ
この絵本は、短い言葉が3つか4つ、繋がってできています。(絵本では伸ばし棒で繋げてあります)
物語は静かに淡々と進んでいきますが、選び抜かれたかのような端的な言葉と『間』で、ヘリコプターたちの情景や感情が伝わってきます。
言葉では書かれていない『間』を読み取ることで、より深く言葉の意味を感じ取ることができる。
『行間を読む』という日本人特有の言葉がありますが、まさにこの絵本。
「ヘリコプターたち」は絵だけではなく、詩のようなきれいな言葉と『間を読む』ことを楽しめる絵本です。
出典:ヘリコプターたち(五味太郎 作・絵)/偕成社
いろんな表情を見せてくれるヘリコプター
五味太郎さんの描く『乗り物』の絵はどれも魅力的で私は大好きです。
特にこのヘリコプターたちは、いろいろな表情を見せてくれます。
嬉しいとき、いたわるとき、病んだとき。
ヘリコプターからこんなにたくさんの感情が表現できるのは、さすが五味太郎さんですね。
淡々とした文章と全体的にモノクロの暗い画面に、この表情豊かなヘリコプターたちがとても映えています。
「ヘリコプターたち」は
大人の絵本?
この絵本には、蝶、響き、儀式、稚い、など難しい漢字や表現を使っています。(漢字のふりがなはついています)
対象年齢は5才〜となっていますが、子供一人で読むのは難しいです。
ですが、まったく理解できないということではありません。
2機のヘリコプターが遊んだり、旅に出たり、闘ったり、ケガをしたりと、絵を見るだけで物語の雰囲気は読み取れます。
たぶん、子供には少し『不思議な絵本』というランク付けになるのではないでしょうか。
その不思議な絵本、疑問符が残る絵本というのは大人になっても心に残っているものです。
子供の成長とともに物語の意味を理解したとき、または『行間を読む』感覚をつかんだとき、今までとは違った深い印象を受けると思います。
そんな意味でも「ヘリコプターたち」は、心に残る絵本として子供たちにおすすめします。
そして、大人の絵本としてもおすすめできる一冊です。
五味太郎さんの絵本はこちらでも紹介しています。
五味太郎「かえるくんにきをつけて」3部作 いるよね、こんな子。でもなぜか憎めないキャラたちに◎!