ミミです
心に残っている物語というのは、小学校の国語の教科書で習ったものが多いのでは?
内容はぼんやりとしか覚えてなくても、心に残るフレーズがあったり、物語の一部分の情景が思い浮かんだりと、国語の教科書には印象深い作品が多く選ばれています。
また、お子さんが国語の音読の宿題で聞いた物語に思わず涙してしまう、なんてことも。(実体験w)
ただ、教科書には原作から抜粋されて掲載されてるものもあります。
原作を読んで、思っていた印象と少し違っていたり、さらに奥深さを感じたり、ということがありました。
なので、今回ご紹介しているのは、原作を読んでほしい作品を中心に選びました。
もう一度、小学校の国語で習った、あの印象深い作品たちを読んでみませんか。
目次
おおきなかぶ
おじいさんは、かぶをぬこうとしました。
「うんとこしょ、どっこいしょ。」
けれども、かぶはぬけません。
「うんとこしょ、どっこいしょ」の繰り返しのフレーズ、テンポの良い文章が最後まで読みやすいです。最後のトリが小さなネズミというのが良い。小さな力でもみんなと力を合わせれば大きな力になるということを教えてくれますね。
子供の頃は絵本のイラストに親近感を覚えなかったのですが(彫りの深い顔がちょっと怖かった…)、今改めて見ると、おじいさんが嬉しそうに親指を立てたり、ぐったり疲れ切っている様子がすごくかわいいくて、おじいさんファンになりました。
ずーっと ずっと だいすきだよ
エルフのことをはなします。
エルフは、せかいでいちばん
すばらしい犬です。
犬のエルフと「ぼく」との素晴らしい日々の生活から別れまで。「ぼく」が誰よりもエルフに愛情をかけていたことを、ラストのシーンで痛いほど感じます。いつかは訪れる『別れ』というものを淡々と丁寧に教えてくれます。
息子の音読の宿題で聞いていて、うっかり涙した作品…。ペットを看取った経験のある方なら「ぼく」の気持ちにはとても共感するのでは。
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チックとタック
おじさんのうちのボンボンどけいの中には、
子どもがふたり、すんでいるんですよ。
うそなもんですか。
このおじさん、夕べちゃんと見たんだから。
おじさんのボンボン時計の中に住んでいる小人のチックとタック。いらずら好きな二人は、真夜中に時計から抜け出します。お腹の減った二人はおじさんのお寿司をこっそり食べてしまいますが…
昭和40年から60年まで掲載されていた、とても人気のあるお話です。時計の中に小人が住んでいる、という設定がとにかくワクワクしました。食べたワサビのせいで時計の音が「ヂッグ、ダッグ」となってしまったというオチがほほえましい。
スイミー
みんな赤いのに、一ぴきだけは、からす貝よりもまっくろ。
およぐのは、だれよりもはやかった
名前はスイミー。
スイミーは兄弟たちが大きなまぐろに食べられ、一人ぼっちになってしまいます。しかし、孤独や悲しみは、海の美しくすばらしい世界によって癒され、「自分」というものを見つけていきます。そしてこのすばらしい海の世界を自由に泳ぐため、仲間たちと一緒に大きなまぐろを追い払います。
学校では「みんなと力を合わせて」ということを中心に教わりましたが、絵本を読むと、むしろスイミーの成長・独立心の強さが感じられる物語です。レオ・レオニの海のイラストも必見!ぜひ絵本で読んでほしい物語。
お手紙(ふたりはともだち)
今、一日のうちのかなしい時なんだ。
つまり、お手紙をまつ時間なんだ。
そうなると、いつもぼく、とてもふしあわせな気もちになるんだよ。
手紙をもらったことのないがまくんに、かえるくんはこっそりお手紙を出します。しかし、かたつむりくんに手紙を届けるように頼んだものだから…
子供っぽいがまくんと、それを見守る母親のようなかえるくんのふたり。どこか読み手に安心感を与えてくれる、そんなともだち。『お手紙』が収録されている『ふたりはともだち』の絵本には他4話のお話があり、どれもクスッとおかしくて心温まります。
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てがみをください
このあいだ、ぼくがゆうびんばこをあけにいったら、
はこのくちからいちじくのはっぱがのぞいていた。
あれっとおもって、なかをみると、みどりいろのかえるが一ぴき、
もぐりこんでいた。
郵便箱の中に住みついたかえる。かえるは自分宛の手紙のもらい方をぼくに教わり、せっせっと手紙を書いたけど、返事がこない。そのうちかえるは出て行ってしまった。手紙を送っていた相手は…。
こちらもかえると手紙のお話です。手書きの手紙、とくに子供のたどたどしい文字や文章などは後々、貴重な宝物になります。今や子供もスマホのメールを使いこなす時代ですが、手書きの手紙の大切さを子供に教えたくなりました。物語の最後はちょっぴり切なくて、後に引く終わり方です。
スーホの白い馬
このモンゴルに馬頭琴(ばとうきん)というがっきがあります。
がっきのいちばん上が、馬の頭の形をしているので、馬頭琴というのです。
いったい、どうして、こういうがっきができたのでしょう。
モンゴルの民話です。腹黒い殿様、善良な市民、忠実な白馬、と善悪がはっきりわかれていて、子供には理解しやすい物語です。
読むと悲しいお話のようですが、悲しいだけではなく、優しさ、絆の深さ、たくましさが伝わってきます。また絵本の赤羽末吉さんの描くモンゴルの広々とした草原、モンゴルの衣装、力強い白馬のイラストも印象的です。
ちいちゃんのかげおくり
「かげおくり」って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。
出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれて、先祖のはかまいりに行きました。
その帰り道、青い空を見上げたお父さんが、つぶやきました。
「かげおくりのよくできそうな空だなあ。」
戦時中のちいちゃん一家のやさしくて悲しい物語。出征、空襲、防空壕…戦争というものを今では想像することしかできませんが、離れ離れになってしまったちいちゃんの家族を思うと、戦争の悲惨さが伺い知れます。
冒頭の温かな家族とのやり取りは、自分も家族との一瞬一瞬を大切にしなくてはと思わずにはいられません。
かわいそうなぞう
あるひ、どうぶつえんのひとが、
そのいしのおはかをしみじみとなでまわして、
わたくしに、かなしいぞうのものがたりをきかせてくれました。
戦時中、上野動物園で起きたノンフィクションの物語です。空襲などの恐れから、動物園のぞうを生かしておくことができず、エサを与えず徐々に弱って死んでゆくぞうと、動物園職員たちの葛藤の様子は胸が締め付けられます。
戦争の矛盾さや残酷さというものを、初めて子供心にも感じた物語で、いつまでも心に残っています。
モチモチの木
全く、豆太ほどおくびょうなやつはいない。
もう五つにもなったんだから、
夜中に、一人でせっちん(トイレ)ぐらい行けたっていい。
臆病な豆太が、大好きなじさまのために自分の臆病な気持ちを克服する。最後、じさまが豆太に言ったセリフ「人間、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ」これこそが勇気というものではないでしょうか。
挿絵の滝平二郎さんの切り絵は、子供の頃は少し怖いと感じていましたが、大人になって見るとまさに芸術、とても美しいです。他にも『花さき山』『半日村』なども有名ですね。
かたあしだちょうのエルフ
エルフは、わかくてつよくてすばらしく大きなおすのだちょうです。
なにしろ、ひといきで千メートルもはしったことがあったくらいです。
それでみんなはエルフ、エルフとよぶようになったのだそうです。
エルフとはアフリカのことばで、千のことなのです。
エルフは強いだちょうでしたが、何より強いのは子供たちが大好きだという想いです。その想いがエルフをさらに強く、勇敢にしました。最後は悲しい結末でしたが、エルフの強さや優しさが、読み終わった後に余韻としていつまでも残ります。
この絵本は木版画で描かれていますが、動物たちは躍動感があり、黒豹やライオンの大迫力の絵には惹き込まれます。この絵の魅力もベストセラーの一つの要因となっているのでは。
もっと詳しく! 「かたあしだちょうのエルフ」絵と物語の全てに惹き込まれる絵本
ごんぎつね
その中山から少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」というきつねがいました。
ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に、あなをほって住んでいました。
そして、夜でも昼でも、辺りの村へ出てきて、いたずらばかりしました。
ごんは自分のいたずらの償いのため、茂吉に毎日栗を届けますが、そうとは知らず、茂吉はごんを撃ってしまう。その直後、栗を毎日届けていたのはごんだと知る。
子供のときは、ごんがかわいそう、ごんを撃った茂吉はひどいと思っていましたが、大人になって読み返すと、ごんの償いを知った茂吉の気持ちを思うと、そちらの方が切ない。。そして、今も昔も、ごんが撃たれて死んでしまうのは、やはり衝撃です。
同じく、新美南吉さんの「手ぶくろを買いに」は、もう少し穏やかなお話ですが、穏やかな中にも独特な緊張感と雪景色の描写が印象的です。
茂吉の猫
昔々あるところに、茂吉という大酒飲みの鉄砲撃ちが住んでいた。
茂吉は嫁の来てがなかったので、10年来、一匹の猫を飼っていた。
茂吉のツケで勝手に酒を買っていた童子を追いかけると、それが茂吉の飼い猫だったことを知ります。化け猫になった猫は、他の化け物たちにお酒を渡していたのでした。
仲間の化け物たちに茂吉を殺すように命じられて、「おら、やんだ。だっておら、茂吉好きだもの」と断わる茂吉の猫、化け物たちを鉄砲で追い払い、「おまえのような小僧っ子が、化け物の仲間入りするんじゃあ無ぇ」と猫を叱る茂吉。この茂吉と猫の関係がたまらなく愛おしい。
私はずっと気づきませんでしたが、作者は「いないいないばあ」や「ちいさいモモちゃん」の松谷みよ子さんです。
やまなし
二ひきのかにの子供らが青じろい水の底で話していました。
「クラムボンはわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
「クラムボンは跳はねてわらったよ。」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」
宮沢賢治の『やまなし』。「やまなし」よりも「クラムボン」の方が印象に残っているのではないでしょうか。
跳ねてぷかぷかと笑うクラムボン。ふんわりした雰囲気から一転、「クラムボンは死んだよ。」「クラムボンは殺されたよ。」と突如として殺伐なものに。そもそもクラムボンとは?そして『やまなし』は何を伝えたかったのか?
大人になってから読む『やまなし』は子供のころとは違った印象を持つのでは?果たしてクラムボンの謎は解けるのでしょうか?ぜひご一読を。
【光村図書】の便利サイト
小学校の国語教科書として有名な光村図書のサイトでは、年代別で収録された作品の一覧が見られるようになっています。昭和46年度版〜平成23年度版まで掲載されていて、比較してみるのも楽しいです。
参考 教科書クロニクル(小学校編)光村図書また、教科書に掲載された作品で、人気の高いものを収録した『光村ライブラリー全18巻セット』も販売されています。単品でも購入できます。
まとめ
小学校の国語で心に残った物語は、大人になっても鮮明に覚えているものだなと改めて驚きました。
それだけ良質な作品を選んでいるということなんでしょうね。
小学校時代、教科書に落書きばかりをしていたことを反省しつつ、息子の教科書にも落書きだらけなことにため息を漏らす管理人でした。