ミミ
出典:ZOO どうぶつえん(アンソニー・ブラウン 作・絵、藤本朝巳 訳)/平凡社
『ZOO どうぶつえん』
あらすじ
(主人公「ぼく」の語り調で)
お休みの日、ぼくたち家族は動物園にでかけたんだ。
ぼくと弟はとても楽しみにしていたけれど、パパのつまらないギャグや、お腹が減って弟とケンカ、それで怒られたり、またパパのギャグでちょっとうんざり。
でもその後は最高のランチを食べて、お土産を買って、お目当てだったゴリラを見て満足して帰ったんだ。
その夜、ぼくは少し不思議な夢をみた…動物たちも、夢をみるのかな?
楽しい動物園のはずなのに、どの動物たちもなんだか怒っているみたい……。圧倒的な描写力で描かれるシュールでおかしな家族の一日。国際アンデルセン賞受賞作家の代表作絵本。
『ZOO どうぶつえん』
みどころ
隠し絵が所々に盛り込まれています
アンソニー・ブラウンの描く動物はとても緻密でリアルで、描写力はとにかく素晴らしいです。
その絵をじっくり見ていると、何やら不思議なものも描かれていることに気づきます。
渋滞している車の上を飛ぶかたつむり、爬虫類の足をした人、明らかに犬の顔をしたスーツ姿の男性…
ちょっと説明が欲しいようなモノたちが、あちこちに登場しています。
さらに、動物たちの絵には秘密が隠されています。
例えば、トラが歩いている後ろには反転させたトラの影。これはうろうろ歩いている様子を表しているそうです。
さらにペンギンのページ…これはみなさんが発見してみてください。結構ぞっとします。。
このように、この絵本には隠し絵が所々に盛り込まれているようです。…ようです、と言うのは私は全てをまだ見つけていないような気がしています。
みなさん、頑張って隠し絵を見つけてみましょう!
このシュールな絵本、クセになります
絵だけではなく、ストーリーもリアルです。
家族で動物園、というとほのぼのした楽しいイメージですが、このストーリーからはそのような雰囲気は伝わってきません。
ただリアルな家族の様子が描かれています。
パパのつまらないギャグ、子供たちは動物そっちのけでケンカ、ママはどこか疲れてる。
そのなんてことない家族に花を添えている(?)のはパパのちょっとおかしな言動。
チケット代を誤魔化そうとしたり、子供たちに内緒でこっそりチョコレートを食べたり、自分のギャグに涙を流して大笑いしたり。
そんなパパに冷めた家族の反応…笑えます。それがこのストーリーの見どころの一つになっています。
そして最後、ぼくの見た夢。現実的な世界から非現実的な世界に。
この絵本は「シュール」という言葉がぴったりですね。むしろ他に説明の言葉が見つかりません。
シュール:超現実的な、不条理な、奇抜な、難解な様子(引用元:三省堂辞書)
大人より子供が絵本の魅力を発見する
この『ZOO どうぶつえん』は、大人の好みがはっきり別れると思います。
それは好き嫌いというより、子供に見せたいか、そうでないかで大きく左右されるのかなと。
上記で述べたようなシュールさ、少し寂しげな動物の描写など、息子がまだ就学前の時、この絵本を読ませることに少し躊躇しました。
が。息子は『ZOO どうぶつえん』を好んで何度も読んでいましたね〜。
好きな理由としてまず、リアルな動物の絵が図鑑のようにたくさん出てくるのが良かったようです。
それから「隠し絵」を発見する楽しさ。子供は発見をすることが大好きです。息子にパパの耳毛を指摘された時は吹きました…
そしてまさかのパパの(おやじ)ギャグにウケてました。笑
絵本の持つ本当の魅力というのは、子供の方がよく分かっているのかなと。
また、大人にはこのナンセンスさがハマる人にはハマります。私もその一人…
緻密でリアルな動物の描写、隠し絵、ナンセンス…アンソニー・ブラウン氏のちょっとクセになるシュールで魅力的な世界を、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。
アンソニー・ブラウン氏は、国際アンデルセン賞画家賞を受賞した世界的にも有名な絵本作家さんです。
ゴリラの絵本が多いのですが、理由はゴリラの生体の魅力の他に、父親がゴリラに似ていたから、ということだそうです。
ゴリラ似のたくましくて優しい最愛の父親を早くに亡くしたため、ゴリラには特別な思い入れがあるようです。
この『ZOO どうぶつえん』にもゴリラが登場しますが、どことなく優しい表情をしていますよ。
◆アンソニー・ブラウン(1946年生まれ)
◆イギリス出身
◆絵本作家、イラストレーター
◆1983年、1992年にケイト・グリーナウェイ賞、1985年にドイツ児童文学賞、2000年に国際アンデルセン賞を受賞。代表作『うちのパパってかっこいい』『こしぬけウィリー』『森のなかへ』など。