今回ご紹介する「かたあしだちょうのエルフ」は悲しいお話です。でも、いつまでも心に残る私の大好きな絵本です。
ミミです
出典:かたあしだちょうのエルフ(おのき がく 作・絵)/ポプラ社
目次
「かたあしだちょうのエルフ」あらすじ
アフリカの草原で、仲間たちと暮らしていただちょうのエルフ。
強くて勇敢で子供の好きな優しいエルフは、他の動物たちから慕われ、頼りにされていましたが、突然襲ってきたライオンから子供たちを助けるためにたたかい、片足をなくしてしまいました。
はじめのうちは、仲間の動物たちはエルフを気遣って食べ物を持ってきたりしていましたが、時間が経つにつれ、みんなから忘れられていきます。そしてエルフはどんどん弱っていきました。
そんな時、今度は黒豹が動物たちを狙ってあらわれました。体の弱ったエルフでしたが、それでも子供たちを助けようと…
ライオンとたたかって片足をなくしたエルフは、子どもたちを守って、黒ひょうとたたかい、永遠に木になってのこります。
「かたあしだちょうのエルフ」みどころ
エルフの想いの強さ
子供たちを助けるため、ライオンとたたかって片足を失ったエルフ。
襲ってきた黒豹から子供たちを守るため、弱った体で最後の力を振り絞ったエルフ。
そして最後は大きな木となり、動物たちの憩いの場となったエルフ。
エルフの行いはとても勇敢でまさにヒーローです。
ですが、悪を許さない、悪を倒す!というようなヒーローではありません。
場面ごとに感じるのは、子供たちが大好き、子供たちを守りたい、というエルフの強い想い。
その想いこそがエルフを強く勇敢にさせていることを教えてくれます。
何が「善」で何が「悪」というものではなく、エルフの想いの強さに圧倒される絵本です。
大迫力の木版画の挿絵
出典:かたあしだちょうのエルフ(おのき がく 作・絵)/ポプラ社
この絵本の挿絵はすべて木版画で描かれていますが、とにかく迫力があり惹き込まれます。
迫力あるライオンや黒豹のアップの他に、エルフの影を描いた場面、あえて色をかすれさせて遠近感を出しているところなど、画力、テクニックにもついつい魅入ってしまいます。
使われている色はほとんど黒なのに、動物たちには躍動感があり、感情までも伝わってきます。
挿絵の迫力ある魅力が、この絵本が50年近くベストセラーになっている一つの要因ではないかなと思います。
小学低学年〜大人におすすめ!
おすすめは小学低学年〜
かたあしを失ったエルフを見捨てた仲間たち、子供たちに容赦なく襲ってくるライオンや黒豹、最後は助からなかったエルフ。
どちらかと言えば、「仲間を守る」「自己犠牲」というような教訓よりも、自然界で生きていくための過酷な状況がそのまま反映されている物語だと思います。
なので、この絵本の対象年齢は3才〜8才となっていますが、小学校前の子供には少し早いように思います。
でも小学校の国語で絵本とは違う物語を知るようになった小学低学年であれば、この絵本から何かを感じ取るのではないでしょうか。そして、いつかその「何か」がなんだったのかがぼんやりと理解した時、その子にとって「かたあしだちょうのエフル」が特別な絵本になるはずです。
大人にも絶賛おすすめです!
この絵本を子供の頃に読んだことのある方は、もう一度読んでほしいと思います。
子供のときに感じたことと、大人になって読み返した時の感じ方の違いを味わえます。
また、まだ読んでいない方にもぜひ読んでほしいです。
読み終わったあと何かを考えさせられた、教訓になった、ではなく純粋に感動する絵本です。
そして最後のエルフの姿がずっと心に残る、そんな絵本です。
最後に
作家のおのきがくさんは、バオバブの樹を見て「かたあしだちょうのエルフ」を思いついたそうです。
アフリカの厳しい環境の中でもたくましく伸びているバオバブの樹から、強くて勇敢なエルフが生まれたのでしょうか。
心が弱っているときは、自然の力強さやたくましさを思い出してみるといいかもしれませんね。
この絵本はこちら でもご紹介しています。
参考 注意!うっかり涙がとまらなくなる絵本絵本を楽しむ豆知識
◆おのき がく(1924年〜1976年)
◆東京出身
◆洋画家、版画家、絵本作家
◆自由美術家協会・金曜会に所属(昭和38年まで)、リュブリャナ国際版画ビエンナーレ展で買い上げ賞受賞(昭和44年)、小学館絵画賞受賞(昭和45年)など
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